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久しぶりに楳図かずお先生の作品を紹介。トラウマ必至な絵が表紙を飾る「恐怖」です。正確には「高校生記者シリーズ」と言われていた連載作品を、単行本収録の際に「恐怖」と改題して出版したそうです。
みやこ高校の新聞部に所属する荒井エミ子と青木夏彦の周りで起こる、様々な恐怖の体験談を描いた短編作品集になっています。
恐怖と一口に言っても、幽霊やモンスター、小泉八雲の「怪談」を漫画化したものや、女性同士の心理や美醜をテーマにしたものまで、とにかく多彩。オーソドックスな展開のものもあれば、名作と評価できる秀逸な作品も数多くあり、とても完成度が高い短編集だと思います。
1960年代後半に描かれた、先生が一番脂が乗っていた時期の作品ですので、絵も非常に美麗(ただし初期の方は、少女雑誌で描いていた可愛らしい絵柄)です。

全21話を一つ一つ語っていくとキリがないので、特に好きな作品を挙げると。

雪女・・・小泉八雲の「雪女」が元ネタ。冬休みに夏彦はクラスメイトたちとスキーをしに行ったが、水島と加藤の男子二人は遠くの方まで行き遭難してしまう。かろうじて山小屋を見つけて避難するが、あまりにも自分たちの今の境遇が「雪女」の話に似ているので、そこで雪女の話を思い出すという展開に。これ以降はあの物語がそのまま楳図先生の絵で再現されています。そしてその回想が終わったところで、二人の前に雪女が現れる・・・。

魔性の目・・・高熱で失明した少女・直美の夢枕に不気味な目玉をした老人が現れる。老人は、その目を自分で引っぺがすと、直美の目に無理矢理くっつけてしまう。その日から直美は目が見えるようになったが、同時に邪な心を持つ人間が醜い化け物の姿に見えるようになる。そして密かに思いを寄せる光夫と仲良くしているミスみやこ高校のえり子も、何故か気味の悪い姿に見えてしまうのだった・・・。
この化け物のデザインが、どれもとてつもなくぶっ飛んでいて気持ち悪く描かれています。笑
そのせいか、とてもショッキングな印象が強い作品。

うばわれた心臓・・・ミステリークラブの女性徒たちが百物語をすると聞き、エミ子も参加する。99話目の番が回った瞳(ひとみ)はネタ切れだったので、仕方なく自分の体験談を語り始めた。それは大の仲良しだった御山多加子(みやまたかこ)との間に起きた恐ろしい出来事だった・・・。
女の友情は儚いもの。心臓を取り出すシーンなどグロテスクな描写が多いですが、やはり巨匠たる所以でしょうか。全く気持ち悪く見えず、むしろ丁寧に書き込まれている分、とても綺麗に見えてしまいます。後年で描かれた「神の左手悪魔の右手」のグロ描写よりかは安心して見れるかな。と言っても内容はとても怖いのですが。

こわい絵・・・こちらの元ネタも小泉八雲の「破られた約束」又は「破約」。みやこ高校の若教師・江夏の妻は病気で余命が僅かと悟り、夫が自分を忘れないようにと、花嫁衣裳を纏った健康な自分の自画像を描き切った後、絶命する。絵は妻の願い通り部屋に飾られたが、その絵の手には何故か短剣が握られていた。それから後、江夏は卒業した教え子と再婚。幸せな日々を過ごしていたのだが、穏やかな表情をした前妻の自画像が、段々と般若のような恐ろしい表情に変わってきたことに新妻は気づいた・・・。
高校を出たばかりの女生徒と教師が結婚するというのは、この時代では普通だったのでしょうか。だとすればいい時代ですよね。
原作の「破られた約束」は後味の悪い内容ですが、男と女の考え方の違いを見事に言い当てた一文で締め括っています。このラストの一文を初めて読んだときは、雷に打たれた様な衝撃をくらいました。男女平等が悪い意味で横行している現代でこそ、是非とも読んでもらいたいですね。
男と女は違うんです。女は女に嫉妬するのです。



こちらは秋田書店から出ていた絶版のサンデーコミックス版。実を言うと、最初にこちらを買ってから復刻版を入手しました。3巻の表紙ですが、同じ絵柄なのに復刻版よりもこちらの方が物凄く怖くないですか?(クリックするともう少し大きいサイズで見れます)今は慣れましたけど、最初は3巻の表紙だけはまともに見られませんでした(・ω・;)
この版には第2話の「悪魔の24時間」が収録されておらず、その代わり3巻には高校生記者シリーズとは関係の無い「灰色の待合室」が掲載されています(これも面白いです)。この話はまだ復刻されておらず、今では読むのが困難な作品になっているようです。

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ようやくおろちの最終話です。
実はサンデーコミックス版の5巻には『戦闘』という話があるのですが、個人的に戦争がテーマの話は苦手なので、今回すっ飛ばしています。




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◆血

資産家の門前家には一草と理沙という姉妹がいた。二人は仲の良い姉妹であったが、妹の理沙は何かと周囲から優秀な姉の一草と比較されていた。お稽古の先生からは勉強やピアノ、母親からは礼儀作法の細かなことで姉と比較され、叱られる毎日を過ごしていた。
理沙が小学校に上がると、教師や生徒も姉と比較するようになり、理沙自身も姉に対して劣等感を持つようになる。次第に彼女は人を避け一人で過ごすようになり、陰気な女へと成長していった。
大人になると姉の一草は結婚して門前家の後を継ぎ、妹の理沙は門前家とは縁の薄い家へ嫁入りした。こうして門前家の重苦しい空気は薄れていったと思われたが、まもなく一草の夫が病死。理沙は始終絶えない夫婦喧嘩の末に家を飛び出すと、飲酒運転で交通事故を引き起こしてしまう・・・。

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ある姉妹の幼少から晩年までを書いた長編。おろちの最後を飾るにふさわしい名作だと思います。1話目の「姉妹」と同じく姉妹ものですが、こちらも負けず劣らず、というか更にドロドロしています。周囲の理沙に対する態度がまあ酷いこと。こんな母親って有り得んの!?と初見の時は真剣に考え込みました。ちなみに、この話でおろちは当事者と一心同体になり、挙句の果てには物凄く酷い目に遭わされます。ここもある意味ホラー。
終盤までずっと神のように優しく、自らの死も受け入れていると思われた一草でしたが、ある理由から生に対する執着が爆発。びっくりするほど醜い部分を曝け出して死んでいきます。やっぱり神のような人間など有り得ないということでしょうか。
理沙も理沙で鬼畜でしたが、でも一概に妹が悪いとも言えないです。理沙の性格は周囲の人間が作り出した結果ではないだろうか。ある意味姉も妹も被害者と言えるかもしれない。勿論一番の被害者は、復讐の道具とされた佳子ですがね。

ラストでおろちが呟くセリフ「いったい誰が悪かったのだろう?」
誰なのでしょうか?



これで「おろち」の紹介はお終いです。よく調べたら、おろちだけで一年以上もかかってしまいました(^^;)元々姉妹ものの話をじっくり書きたくて、一話ずつの紹介にしましたが、次からはもう少し纏めて書くようにしたいです。全部のエピソードを一つに纏めて書けばよかったなぁと何度思ったことか笑

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数年ぶりに体調を崩して散々な一週間でした笑



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◆眼

おろちが町中で見かけた盲目の少女・恵子は、社宅で父親と二人で暮らしていた。
その日も夕飯の支度を終え父の帰りを待っていた恵子だったが、突如家に父の友人と思しき男性が助けを求めて駆け込んできた。事態が飲み込めない恵子をよそに、続けてもう一人男が侵入してくる。そして友人の男性は、後からやってきた男にナイフで刺されて殺されてしまう。男は恵子が盲目であることに気づくと、そのまま彼女を見逃して逃げていった。
翌日おろちが見た新聞には、恵子の父親が殺人犯として逮捕されたことが書かれていた。警察の取調べを受けた恵子は犯人の特徴と父の無実を訴えるが、盲目であることを理由に全く信用されない。途方にくれる恵子だったが、家の中に身に覚えのない物を見つける。いつも一緒に遊ぶ近所の少年・さとるの拙い説明から、それが犯人の身分証明書であることに気づいたが、自分のミスで証明書を燃やしてしまう。決定的な証拠がなくなってしまったが、それでも恵子はさとるに犯人の男を捜してくれるよう頼むのだった・・・。

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盲目というハンデを抱えた主人公が、信じられないほどの行動力を発揮して事件を解決する正統派なお話ですね。ある理由から、親切な筈の近所の人間は誰一人助けてくれない、本当に孤独な戦いがひたすら続きます。
最終的に真犯人は逮捕されますが、それでも微妙に後味が悪い結末になっています。恵子は正しいことをしたのだが、近所の人間からは却って避けられるようになり、父も会社に居づらくなってしまい、結局親子は社宅を出て行ってしまいます。何という理不尽だろうかとちょっと悶々。でも恵子の行動力がとにかく凄くて、何気に好きなお話です。

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◆秀才

おろちは、ある祭りの中で見かけた赤ん坊の可愛さが印象に残り、その赤ん坊の人生を観察してみることにした。赤ん坊の名前は立花優。大学教授の父と優しい母に囲まれてすくすくと育っていった。しかし優が一歳の誕生日を迎えた日、家に強盗が入り、優は強盗に首を切りつけられてしまう。この事件をきっかけに一家は東京へ引っ越すが、幸せだった生活は全てが一変した。優は強盗に付けられた首の傷が原因でろくに友達が出来ず、かつてとは別人のように変わってしまった冷血な母によって、幼稚園に入る前から勉強を強要させられる毎日になっていた。勉強をする目的は、父親が出たK大に入る為だった。そして幼稚園、小学校に進むにつれ勉強が良くできる子になっていったが、母はますます知識を詰め込むことを強いていくのだった。
幼少期からいやいや勉強をし続けてきた優だったが、小学5年生のある日、図書館で自分が一歳の時に起きた事件の新聞記事を見てからは、積極的に勉強をするようになる。中学・高校と進学しても変わらず勉強漬けの日々を過ごしながら、ついにK大受験の日がやってくる。
受験終了後、帰宅した優は母との会話もそこそこに眠りにつく。その間に母は密かにK大に電話をして、息子の成績を聞いていた。その結果に真っ青になった母は、回答を書き換えるよう頼み込む。そんな母の後ろから優が呼びかけた。
「お母さん、あんなに勉強を強制した人が・・・K大に入ることをあんなに願った人が、今になって何故そんなことをおっしゃるのです!?そのわけは僕が言いましょう」

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これもおろち恒例のどんでん返しにびっくりしたエピソードです。勉強という名を借りた親からのいじめは壮絶ですが、母の心境を考えるとわからなくもないかなぁ。この話もおろちは中盤で積極的に介入しますが、セーラー服という貴重な姿が見られます(笑)それにしてもおろちは何を着ても似合っていてオシャレです。
ラストでおろちが語る言葉は、家族とは何かを問いかけているようで、とても奥が深い。これによってエピソードの面白さがぐんと上がり、名作に仕上がったように感じました。

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◆骨

貧しい家に生まれ、不幸な幼少時代を送った千恵は、それでも美しい女性に成長した。そして平凡だが優しい男性と結婚し、ようやく幸せを掴んだものの、夫はひき逃げで怪我をしてしまう。夫が運び込まれた病院に看護婦として働いていたおろちは、甲斐甲斐しく夫を看病する千恵の様子を見守っていた。そのうち夫の具合もよくなってきたから自宅で看病すると言って、夫婦は病院を去っていった。
退院後の夫は順調に回復していき、ある日、足慣らしにと散歩に出かけた。ところがその途中で、足を滑らして崖から落ちて死んでしまった。夫の死を異常に悲しむ千恵。そんな千恵を見て、おろちはある方法を使って夫を蘇らせようとしたが・・・。

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単行本一冊丸々使った長編。
狂言回しのおろちが積極的に動く珍しいお話です。しかし彼女が動いてしまったことで救いの無い、非常に後味の悪い結末が待っているのですが・・・。
夫が墓場から蘇るシーンはスプタッラー色が強いですが、絶頂期の楳図先生の絵なので、全く気持ち悪さは感じなかったです。むしろ綺麗^^

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