前回の『姉妹』に続いて、今回は『ステージ』です。
ちなみに私はサンコミ版しか持っていないので、基本的にサンコミ版の掲載順で書いていきます。
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◆ステージ
3歳の目黒佑一は、テレビが好きな男の子。
父親を迎えに行こうと、青信号になった横断歩道を渡っている最中に父を見つける。だがそこへ信号無視の車が横断歩道に突っ込んできたので、父親は息子をかばってはねられてしまう。車は一瞬停車したが、すぐに走り去ってしまった。その直後、おろちが行き合わせ父を助け起こす。父は大丈夫ですと言いながら佑一と一緒に帰っていった。しかしおろちが心配したとおり、父親はその夜苦しみながら死んでいった。佑一は、父を殺した犯人を知っていると言い、それはテレビに出ている「おはようのおにいたん」だと言い続けた。
おはようのおにいたん-田辺新吾には事件当日のアリバイがなかったが、田辺は反抗を否認し、裁判の日を迎える。傍聴人として出席したおろちにも、田辺の態度を見て彼が犯人だと確信するが、結局佑一の証言は裁判では認められず、田辺は無罪になってしまった。その後、田辺は引退宣言をして、テレビから姿を消した。
田辺の引退後すっかりテレビ嫌いになり、どこか暗い影を持つ少年に成長した佑一は、中学を卒業後に上京。クラブで働きながら歌の練習をし、オーディションに出演。1位をもぎ取り、大人気の歌手・花田秀次の内弟子になった。
花田の家に住み込みで働きながら、こと細かに花田の世話をする佑一は、次第に花田の信頼を得ていく。花田と一緒に歌や演技のレッスンもするようになっていった。嫌いだった芸能界に自ら足をさしいれた佑一の姿におろちは、全ての人を今に見返してやろうとしているのだと思った。
ある日、佑一は兄弟子の仕業に見せかけて、花田に水銀を飲ませる。喉が潰れて声が出なくなった花田に佑一は、自分が代わりに歌うことを提案。花田の特徴を真似て歌った佑一の歌声は、今までの花田にはない新鮮な魅力があって好評だった。次第に佑一自身にもお金が入るようになり、佑一は花田へのプレゼントにとスポーツカーを買って、今後は自分が運転手を勤めると言った。そしてテレビの出演が終わり、酒を飲んだ花田を車に乗せた佑一は、スピードを出して運転していく・・・。
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父親を殺しながらも裁かれなかった男に対して、物凄く長い時間をかけた、綿密で周到な復讐物語に仕上がっています。じわじわと追いつめていく佑一の復讐は、端から見たら嫌ですね。それだけ佑一の強い気持ちの表れでもありますが。
佑一の復讐が実を結ぶ結末は、後味の悪いエピソードが多い「おろち」の中では、ハッピーエンドと言える異色作になっています。故郷に帰ってからも周囲からは変わらず白い目で見られますが、それでも晴れ晴れとした佑一の表情には、読み手にもすっきりした気持ちにさせてくれます。良いエピソードでした。
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